1. ホワイトアウトでの死亡事故、判決の結果は妥当?
1-1. この記事の目的
この記事では「ホワイトアウトの死亡事故」について詳しく解説をします。
この記事の目的は3つあります。
- ホワイトアウトの歩行者死亡事故の判決について、妥当か否か理解できる。
- 交通事故による予見性と安全義務について理解できる。
- ホワイトアウト時の運転方法がわかる。
それでは、早速みていきましょう。
出島Z
損害保険業界に10年居座り続けてしまった出島Zです。元々は生命保険の営業を行っており、その後某外資系自動車保険会社に入社し、交通事故の査定業務、示談交渉を行なっていました。物損担当者・人身損害担当者を経験し、年間600件以上の交通事故を解決に導いてきました。正確に数えてはいないですが、トータル5,000件以上は確実に示談を行ってきました。損保を2社渡り歩きました。FP資格、損害保険募集人(自動車保険、火災保険、傷害疾病保険)、生命保険募集人、共済募集人、高校教員免許保持者。趣味は音楽鑑賞、作成、DJ、ブログ、インテリア、グラフィックデザインです。
2. ホワイトアウトの死亡事故の概要
先日、北海道で起きたホワイトアウトの状態で女子大学生をはねて死亡させた事故の判決が、ニュースで取り上げられていました。
後志管内ニセコ町の道道で2018年2月、乗用車で歩行者2人をはねて死傷させたとして、自動車運転処罰法違反(過失致死傷)の罪に問われた調理師の男(48)=同町=の判決公判が10日、札幌地裁であった。駒田秀和裁判長は、当時の天候が吹雪で視界が奪われる「ホワイトアウト」だったことから「徐行義務があった」とし、禁錮1年2カ月、執行猶予3年(求刑禁錮1年10カ月)を言い渡した。弁護側は即日控訴した。
判決理由で駒田裁判長は「吹雪などによる視界不良時には、障害物の発見が遅れても衝突を避けられる速度で運転する義務がある」と指摘。今回の事故現場の当時の視界を約11・1メートルと認定して「直ちに停止することができる速度で進行しなければならなかった」と述べ、「速度を落として注意深く運転していた被告に過失はない」として無罪を訴えた弁護側の主張を退けた。
引用元:北海道新聞
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/381995
概要としては、「 調理師の男が2018年2月にホワイトアウトの状態で乗用車を走行し歩行者2人をはねて死傷させ、 札幌地裁から禁錮1年2カ月、執行猶予3年(求刑禁錮1年10カ月)を言い渡された 」というものです。
この内容について考察していきたいと思います。
3. ホワイトアウト事故の考察、安全義務とは?
今回の事故では、「ホワイトアウト」の状況下で、運転者に通常時相当の「予見義務」が問われるか?ということが争点となっていました。
この事故に対して、北海道地裁の裁判官は、
「吹雪などによる視界不良時には、障害物の発見が遅れても衝突を避けられる速度で運転する義務がある」
と指摘し、禁錮1年2カ月、執行猶予3年(求刑禁錮1年10カ月)を言い渡しました。
ここで問われていた交通事故の「予見性」について改めて考えていきたいのですが、 運転者にはまず法律で定められた義務があります。
その義務とは、交通事故道路交通法第70条に定められており、
(安全運転の義務)
車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない。
交通事故道路交通法第70条
と明記されているんですね。
要約しますと、「車を運転する人は、ハンドルやブレーキを適切に操作し、他人に危害を与えないような速度と方法で運転をしなければならない」ということですね。
これらを犯してしてしまった場合に、 「安全運転義務違反」となります。
さらに、この 「安全運転義務違反」 は7つの区分にて分かれており、
安全運転義務の区分 | |
---|---|
運転操作不適違反 | ペダル踏み間違い |
ハンドル操作不適 | |
ブレーキ操作不適 | |
漫然運転違反・・・・ボーっと何も考えずに運転し、運転に集中してない行為 | |
脇見運転違反・・・・運転中に外観やスマートフォンやカーナビ操作等に注視している行為 | |
動静不注視違反・・・人や車の動きの注視を怠る行為 | |
安全不確認違反・・・「前方・左右不確認」や「後方不確認」など | |
安全速度違反・・・・速度超過や横断歩道や交差点等で必要な減速を行わない行為 | |
予測不適違反・・・・勝手な思い込みで相手の動きの予測を誤ってしまう行為 |
このような内容になっていまして、これらのどれかに該当すれば 「安全運転義務違反」 になり法律を犯すことになります。
言ってしまえば、運転する上で「初歩的」と言いますか、「必ず」守らなければならない前提の決まり事になります。
ちなみに、「予見性」のことで言いますと、運転者が事故を起こさないように常に予見をしながら運転をしなければなりません。
4. ホワイトアウトの事故の考察、結論
では、これらの運転する上での義務を理解したところで改めて今回の事故を見ていただきたいのですが、
この運転者は、間違いなく安全義務を怠っていることになります。
この7つの項目の内、 動静不注視違反 、 予測不適違反をしていることになります。
理由は、ホワイトアウトと言う状況下ではあったものの、女子大生に接触しているという事実があり結果として人の動きを捉えられていなかったことと、歩道に人が歩いていることを予測し、徐行できるだけの速度で走行していなかったからです。
特に今回の裁判でも問われている「予見性」について話しますと、弁護団の主張では、
「視界不良の中で減速すれば追突される危険があり、徐行義務はない」
引用元:産経新聞
としているのですが、そもそもそれが間違いなんですね。
逆と言いますか・・・・・、逆なんですね。
「徐行しないと他人を死傷させる恐れがある」なんですよね、道路交通法70条を前提に考えるのであれば。
あきらかに 「視界不良の中で減速すれば追突される危険がある」って主張そのものが、安全義務違反の予測不適違反に該当します。
勝手な思い込みで予測を誤ってしまう行為ですね。
もう一つ言いますと、
周辺の車が男の車と同じようなスピードで走っていたため、ホワイトアウト時に一時停止すると後続車に追突されるおそれがあったと反論する。さらに、歩行者が車道に寄り過ぎていたと主張し、事故は回避できなかったと訴えている。
引用元:朝日新聞
周辺の車が男の車と同じようなスピードで走っていたため、 ホワイトアウト時に一時停止すると後続車に追突されるおそれがあったと主張しているのですが、後方の車がスピードを出して走行していたことを注視できるのかという疑問も浮かび上がってきます。
一時停止はしないまでも、いつでも止まれるような徐行をしながら運転をすれば良いだけの話なんですね。
これもまた、 安全義務違反の予測不適違反に該当します。
勝手な思い込みですね。
今後は、運転者と弁護士は控訴するとのことです。
5. ホワイトアウトの事故の考察、管理人の意見
今回の件で僕の意見を言うのであれば、「運転者側は控訴しないほうが良いんじゃない?」という感じです。
せっかく執行猶予付きで判決をもらったのに、たぶん上告すると執行猶予付きがなくなるんじゃないかなと思ってます。
理由は、今の運転者側の主張だと、どうしても運転者側の利己的な主張かなと思いますし、心証が結構悪いと思いますね、歩道者が走行車線に入ってきてると証拠がないににも関わらず主張しているあたりが。(ドラレコに写っているので有れば強く出てもいいですが)
もう一つ言うのであれば、仮に今回のケースが高等裁判所の判決で無罪にでもしてしまったら、今後の交通事故の判例で、
「視界が悪い状況で人をはねた場合には、運転者の運行供用者責任は問われない」
ことになりかねませんし、「交通事故の賠償の世界観を少し変えてしまうような事件」に発展してしまいますからね。
そういう意味では、無罪になる可能性は極めて低いでしょうし、今後の結果も気になるところではあります。
6. ホワイトアウトの際の運転
ホワイトアウトという状況は突発的に発生するものですので、まずはこのような状況に巻き込まれたら、
- 徐行をし(できれば最徐行)、
- ハザードランプをつけ、後方の車両に低速度で走行していことを伝える、
- 必要があれば路肩にハザードランプを点滅させ一時停止する
ようにしましょう!
安全運転を心がけてください。
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