1. 前橋の女子高生2人死傷事故が無罪判決になった訳、徹底解説します!
1-1. この記事の目的
この記事では「前橋の女子高生2人死傷事故が無罪判決になった理由」ついて詳しく解説をします。
この記事の目的は2つあります。
- 前橋の女子高生2人死傷事故の概要がわかる。
- 前橋の女子高生2人死傷事故がなぜ無罪になったかがわかる。
では早速みていきましょう。
出島Z
損害保険業界に10年居座り続けてしまった出島Zです。元々は生命保険の営業を行っており、その後某外資系自動車保険会社に入社し、交通事故の査定業務、示談交渉を行なっていました。物損担当者・人身損害担当者を経験し、年間600件以上の交通事故を解決に導いてきました。正確に数えてはいないですが、トータル5,000件以上は確実に示談を行ってきました。損保を2社渡り歩きました。FP資格、損害保険募集人(自動車保険、火災保険、傷害疾病保険)、生命保険募集人、共済募集人、高校教員免許保持者。趣味は音楽鑑賞、作成、DJ、ブログ、インテリア、グラフィックデザインです。
2. 前橋の女子高生2人死傷事故
前橋の女子高生2人死傷事故の事故概要です。
事故は18年1月9日午前8時25分ごろ発生。被告の男は乗用車を運転中、急激な血圧低下で意識障害に陥り、対向車線の路側帯を自転車で走っていた市立前橋高1年の女子生徒=当時(16)=と同校3年だった少女=同(18)=をはね、1年の女子生徒を死亡させ、少女に脳挫傷などのけがを負わせたとされる。
引用元:上毛新聞
https://www.jomo-news.co.jp/news/gunma/society/185309
事故の状況としては、「2018年1月9日 午前8時25分ごろ、被告が乗用車を運転中、急激な血圧低下で意識障害に陥り、対向車線の路側帯を自転車で走っていた市立前橋高1年の女子生徒=当時(16)=と同校3年だった少女=同(18)=をはね、1年の女子生徒を死亡させ、少女に脳挫傷などのけがを負わせた」ものです。
また、この事故の被告に対して、 前橋地方裁判所は無罪を言い渡しました。
前橋市でおととし、自転車の高校生2人が車にはねられ死傷した事故で過失運転致死傷の罪に問われた87歳の男性に対し、前橋地方裁判所は「薬の副作用で血圧が下がったことが事故の原因の可能性が高く、予見できなかった」などとして無罪を言い渡しました。
無罪判決を受けたのは、前橋市の川端清勝さん(87)です。
おととし1月、前橋市内で乗用車を運転中に自転車で登校途中の女子高生2人をはね、このうち太田さくらさん(当時16)を死亡させたほか、もう1人にも大けがをさせたとして過失運転致死傷の罪に問われました。
これまでの裁判で検察が「家族から運転しないよう注意されていて、事故の発生を予見できるだけの能力を備えていたと認められる」などとして、禁錮4年6か月を求刑したのに対し、被告の弁護士は「低血圧による意識障害が生じるおそれを認識しておらず、事故の発生を予見できなかった」などと無罪を主張していました。
5日の判決で前橋地方裁判所の國井恒志裁判長は、「薬の副作用で血圧が下がったことが事故の原因の可能性が高い。被告は医学的な知識を持ち合わせておらず、事故の発生を予見できなかった」として無罪を言い渡しました。
判決のあと渡邉雅博弁護士は「裁判所が難しい判断をしたことに敬意を表したい。主たる原因は血圧の低下だったが、高齢者の方はさまざまな体調不良を抱えていてどのようなことが事故につながるかわからない。無罪判決となったが、同じような悲劇を繰り返さないために今後どういうことができるのか考えてほしい」と話していました。前橋地方検察庁の上本哲司次席検事は「判決内容を詳細に検討し上級庁と協議の上、適切に対応したい」というコメントを出しました。
引用元:日経新聞
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200305/k10012315211000.html
概要としては、『前橋地方裁判所は「薬の副作用で血圧が下がったことが事故の原因の可能性が高く、被告は医学的な知識を持ち合わせておらず、事故の発生を予見できなかった」として無罪を言い渡したもの』です。
被告が死亡事故を起こしてしまっているにも関わらず、被告の予見性が認められないとのこで、まさかの無罪判決が下され、ニュースでも大きく報道され、Twitter上でもたくさんの批判の声が上がっていました。
3. 前橋の女子高生2人死傷事故の事故状況
今回の事故の状況ですが、 加害車両が対向車線で走行していた車に右サイドミラーが接触し、その後対向車線を走行し続け、縁石に乗り上げると同時に女子高生を轢き、民家の塀にぶつかりながら車が横転すると同時にさらに2人目の女子高生をはね、元の車線に戻り車両に追突したのもです。
引用元:産経新聞
https://www.sankei.com/premium/news/180202/prm1802020008-n1.html
車の破損状態を見ると、バンパーにかなりの破損が見られ、横転する位のスピードも出ていたことがわかります。
4. 女子高生2人死傷事故の過失割合考察
事故の民事上の過失割合についての考察です。
今回の事故での過失割合は、被告100: 被害者0です。
理由は、言わずもがなですが…(ニュースの情報を読み解く限り)
車両がセンターラインを割って走行していますので、判例タイムズ304図が適用され、被害者は過失0です。
ですので、被告が対人保険と対物保険を使用し、それぞれの被害者に損害額の100%を補償していくことになります。
5. 前橋の女子高生2人死傷事故は、なぜ無罪判決?
なぜ、前橋の女子高生2人死傷事故は無罪判決であったかを解説します。
まず結論から言いますと、今回被告が無罪になったのは、被告のステークホルダー(利害関係者)の管理責任を問う社会へのメッセージが込められており、意図的に裁判所が無罪にした可能性が高い、ということです。
そもそも、この被告である男性は自身の管理能力がままならない状態で日常を生活しており、それにも関わらずに、被告の周りの関係者(親族、病院、運転免許更新センター)がその状況を放置していた為に起きた事故であることを、無罪判決から読み解くことができるのです。
被告の弁護人はこのように答えていました。
判決のあと渡邉雅博弁護士は「裁判所が難しい判断をしたことに敬意を表したい。主たる原因は血圧の低下だったが、高齢者の方はさまざまな体調不良を抱えていてどのようなことが事故につながるかわからない。無罪判決となったが、同じような悲劇を繰り返さないために今後どういうことができるのか考えてほしい」と話していました。
引用元:NHK WEBS NEWS
さらに裁判官も、このようなことを言っています。
裁判長は、「同じ悲劇を繰り返さないための無罪判決だ」と述べました。
引用元:NHK WEBS NEWS
今回の争点は
- 予見可能性に基づいて運転を控える注意義務があったか
- 刑事責任能力の有無
でした。
上の図左側の弁護側の主張をみていただきたいのですが
「注意義務」に関しては、医師からも運転を中止するような指示もなく、運転免許証も事故4カ月前に問題なく更新できています。
「刑事責任能力」に関しては、「認知症」で心身喪失状態であり、そもそも責任能力がないことを主張しています。
ちなみに、前頭側頭型の認知症といえば結構ひどい認知症です。
前頭葉は「人格・社会性・言語」を、側頭葉は「記憶・聴覚・言語」を主につかさどっていて、ここが機能しなくなると、社会性が欠如したり、同じことを繰り返したり、同じ言葉を何回も繰り返したりするようになります。
と言うことは、整理しますと、
この加害者の男性は、認知症を患っており、自己管理もままならないような人にもかかわらず、それを「医療機関」や「運転免許更新センター」が見て見ぬふりをして運転をさせる状況を作り出していた、ということになるんですね。
裁判官はこの事実を認め、このような「自己管理もままならない状態の老人」をしっかり管理していない家族やその他利害関係者に対し監督責任があると結論づけ、被告自体をあえて無罪にしたというのが、今回の事故の本質なんですね。
6. 前橋の女子高生2人死傷事故(総括)
ですので、結論としては、
今回被告が無罪になったのは、被告のステークホルダー(利害関係者)の管理責任を問う社会へのメッセージが込められており、意図的に裁判所が無罪にした可能性が高いということです。
被害者の顔が浮かばれないと思う反面、社会に与えるインパクトは強いですし、そういったメッセージを込められてこの判決を出したことを、社会がちゃんと受け止め、運転免許制度につなげていくなり、医療機関における認知症の人たちへの対策につなげていくことを期待します。