1. 2019年の交通事故死は戦後最小の3,215人。交通事故死の推移と予想について徹底解説します!




1-1. この記事の目的
この記事では「2019年の交通事故死とその推移」について詳しく解説をします。
この記事の目的は3つあります。
- 2019年の交通事故者数がわかる。
- 交通事故死の推移について理解できる。
- 2020年以降の自動車事故についての世界観が少しわかる。
それでは早速みていきましょう。
出島Z
損害保険業界に10年居座り続けてしまった出島Zです。元々は生命保険の営業を行っており、その後某外資系自動車保険会社に入社し、交通事故の査定業務、示談交渉を行なっていました。物損担当者・人身損害担当者を経験し、年間600件以上の交通事故を解決に導いてきました。正確に数えてはいないですが、トータル5,000件以上は確実に示談を行ってきました。損保を2社渡り歩きました。FP資格、損害保険募集人(自動車保険、火災保険、傷害疾病保険)、生命保険募集人、共済募集人、高校教員免許保持者。趣味は音楽鑑賞、作成、DJ、ブログ、インテリア、グラフィックデザインです。
2. 2019年の交通事故死について

2019年の交通事故による死者数が警察庁のHP上で発表されました。
そのニュースを取り上げてみます。

2019年の全国の交通事故による死者は前年より317人(9.0%)少ない3215人だったことが6日、警察庁のまとめで分かった。減少は4年連続で、統計が残る1948年以降で最少を更新した。都道府県別の最多は千葉の172人(前年比14人減)。18年まで16年連続最多だった愛知が156人(同33人減)、北海道が152人(同11人増)で続いた。
同庁担当者は「街頭での取り締まり活動強化やシートベルト着用の定着、自動ブレーキの普及など様々な要因が考えられる」としている。
19年の死者のうち、65歳以上の高齢者の死者数(速報値)は1782人で、前年より184人(9.4%)減った。全年齢に占める高齢者の割合は55.4%に上り、過去最多だった前年(55.7%)より減ったものの高止まりが続く。人口10万人当たりでは、65歳以上の死者数は5.01人で、全年齢(2.54人)の2倍近かった。
事故発生件数(速報値)は38万1002件、負傷者数(同)は46万715人だった。
交通事故による死者数は1970年(1万6765人)がピークで、その後は減少傾向にある。政府は20年までに年間の交通事故死者数を2500人以下とする目標を掲げている。今後高齢者人口の増加が見込まれるなか、警察庁は被害防止の対策を進める。
引用元:時事ドットコムニュース(画像)、日経新聞
https://www.jiji.com/jc/graphics?p=ve_soc_tyosa-jikokoutsu&utm_source=yahoo&utm_medium=referral&utm_campaign=link_back_edit_vb
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO54071250W0A100C2CC1000/
概要としては、「昨年度に比べたら死者数は317人減少しており、死者数は1948年以降の最小になり、2019年のワースト1位は千葉県の死者数172人、ワースト2位は愛知県の156人、ワースト3位は北海道の152人 。65歳以上の高齢者の死者数は昨年よりも184人減少した」とのことです。
世間では交通事故のニュースが大きく取り上げられ、「あたかも交通事故の死者数が年々増加しているような報道」をしていますが、実際のところは年々交通事故による死者数は着実に減ってきています。
この事実は間違わないようにしましょう。
33. 国家公安委員会委員長のコメント

国家公安委員会委員長のコメントもありましたので、下記に記載します。
国家公安委員会委員長のコメント
昨年の交通事故による死者数は、3,215人で、3年連続で戦後最少を更新しま
した。
これは、政府をはじめ、関係機関・団体や国民一人一人が交通事故の防止に向
け、積極的に取り組んできた結果だと考えております。
しかしながら、今なお多くの尊い命が交通事故で失われていることには変わり
なく、子供が犠牲となる痛ましい交通事故も依然として後を絶ちません。
国家公安委員会としては、子供をはじめとする歩行者の安全の確保や高齢運転
者等の安全運転の励行等を重点として、各界各層と連携しながら、交通安全教育、
交通指導取締り、交通安全施設等の整備、先端技術の普及活用等の諸対策を着実
に推進するよう、警察を指導してまいりたいと考えております。
交通事故を防ぐために、自動車や自転車の運転者、歩行者がそれぞれ相手の立
場に配慮し、思いやりの気持ちをもって行動するようお願いします。引用元:警察庁,e-STAT
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00130002&tstat=000001032793&cycle=7&year=20190&month=0
死者数が最小を記録したことに対し、 国家公安委員会委員長のコメントにもその気持ちが伝わってきます。
また「子供が犠牲となる痛ましい交通事故」については、昨年の5月に発生した「大津の園児の死亡事故」を指しています。
国家公安委員会としても、 交通指導取締り、交通安全施設等の整備、先端技術の普及活用等の諸対策を着実することをコメントの中に宣言していますね。
4. 交通事故の死者数の推移
昭和23年から令和元年までの死者数の推移をみていきましょう。

引用元:警察庁,e-STAT
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00130002&tstat=000001032793&cycle=7&year=20190&month=0
日本の事故での死亡者数は、昭和30年代に入り、急激に増加してきました。
1959年(昭和34年)に入ると交通事故による死者数は1万人を超え、1970年(昭和45年)に1万6,765人 となりピークを迎えることになります。
「交通戦争」という言葉をご存じでしょうか?
1961年(昭和36年)の流行語に選ばれた言葉でして、交通事故による死者数が増加し続ける状況が、一種の「戦争状態」だと、新聞で表現されたことから生まれた言葉です。
日清戦争( 1894年 ~1895年)にて日本側の死者数が 1万3,488名 であったことから、日新戦争と同等の死者がいたことからこのような造語が生まれたと言われています。
当時の死者の数が増加していく原因を、内閣府は下記のように分析しています。
車社会化の急速な進展に対して,道路整備,信号機,道路標識等の交通安全施設が不足していたことはもとより,車両の安全性を確保するための技術が未発達であったことや,交通社会の変化に対する人々の意識が遅れていたことなど,社会の体制が十分に整っていなかったことが要因であったと考えることができる。
引用元:内閣府
https://www8.cao.go.jp/koutu/taisaku/h30kou_haku/zenbun/genkyo/h1/h1b1s1_1.html
高度経済成長にあたり、急激に日本の車の保有台数が増えることに対し、社会のインフラや車の性能が追い付いていなかったということですね。
また交通事故に対する人々の安全意識も今に比べたら甘かったのでしょう。
このことから、 1970年(昭和45年)に交通安全対策基本法を制定し、国を挙げての交通安全対策が進められていきました。
この交通安全対策基本法ですが、 5年ごとに目標値を設定し、その検証を行っていくシステムになっていまして、より安全な社会をつくるための計画が実施されてきました。
1971年(昭和46年)から 第1次交通安全基本計画 スタートし、現在では 第10次交通安全基本計画 ( 平成28年度~令和2年度 )のクールに入っています。
ちなみに、 第10次交通安全基本計画 ( 平成28年度~令和2年度 ) の目標は、
- 令和2年までに,年間の24時間死者数を2,500人以下にする。
- 令和2年までに,年間の死傷者数を50万人以下にする。
この目標を達成するために、国を挙げて必死に対策を講じています。
今年までにこれらの目標をクリアーしていかないといけない訳ですね。
5. 2020年以降の交通事故の予想

では、 第10次交通安全基本計画 ( 平成28年度~令和2年度 ) の目標をクリアーできるか否かについて、僕の意見を述べます。
今年までの目標は、
- 令和2年までに,年間の24時間死者数を2,500人以下にする。
- 令和2年までに,年間の死傷者数を50万人以下にする。
ですが、僕はクリアーできると思っています。
理由は、今年から自動車産業の技術はこれまでにないほどの革新的な進歩を遂げるからです。
「官民ITS構想・ロードマップ」ってご存じでしょうか?
政府が2014年に策定した、自動車を①一般家庭用車、②物流サービス、③移動サービスの3つに分けて自動運転を目指す政策なのですが、
2020年の今年までに、
- 高速道路での自動運転(レベル3)
- 実証実験の枠組を利用した自動運転移動サービス
を実現することを目標としています。
自動運転のレベル3と言えば、実質運転するのはシステムになります。
今までのレベル2は、あくまでも運転者がハンドルを握り、車間距離を保ったり、ブレーキを作動してくれるのはシステムが行うなのど、システムが補助的な意味合いが強かったのですが、レベル3はシステムが運転を行い、運転者が補助的な操作を行うレベルなんですね。
ちなみに、政府は2025年までにレベル4の導入を予定しています。
レベル4とは、システムが完全に運転を行い、運転者が補助的な役割もしなくても良いレベルのことを指します。
これらの運転技術により、より一層事故が減っていくことが考えられます。
実際に、先月のニュースでこのようなものがありました。
ホンダは2020年夏をメドに、条件付きで運転を自動化する「レベル3」の自動運転車を発売する。一定の条件下であれば緊急時を除きシステムが運転し、乗車している人は前方を向かずスマートフォンの操作やテレビの視聴などが可能になる。「レベル3」を市販するのは日本の自動車メーカーでは初めてだ。自動運転車は当初の価格が割高になり、量産で下がるかが普及のカギとなる。
引用元:日経新聞https://www.nikkei.com/article/DGXMZO53328750T11C19A2MM8000/
まだ一般の家庭に浸透するのには時間がかかりますが、これを皮切りに時代は大きく変わっていきます。
これから2020年からこの5年間の自動車の技術向上には目を見張るものがあると予想されますし、僕たちが全く予想もしなかった世界が訪れます。
それと同時に、事故で亡くなる方も減少する事を是非とも願いたいです。