1. 池袋親子死亡事故を改めて考察します!







1-1. この記事の目的

この記事では「 池袋親子死亡事故」について、改めて詳しく考察をしていきます。
この記事の目的は3つあります。
- 池袋親子死亡事故の概要がわかる。
- 池袋親子死亡事故は何故「逮捕」されないのかがわかる 。
- 池袋親子死亡事故は何故「在宅起訴」なのかがわかる。
それでは早速みていきましょう。
出島Z
損害保険業界に10年居座り続けてしまった出島Zです。元々は生命保険の営業を行っており、その後某外資系自動車保険会社に入社し、交通事故の査定業務、示談交渉を行なっていました。物損担当者・人身損害担当者を経験し、年間600件以上の交通事故を解決に導いてきました。正確に数えてはいないですが、トータル5,000件以上は確実に示談を行ってきました。損保を2社渡り歩きました。FP資格、損害保険募集人(自動車保険、火災保険、傷害疾病保険)、生命保険募集人、共済募集人、高校教員免許保持者。趣味は音楽鑑賞、作成、DJ、ブログ、インテリア、グラフィックデザインです。
2. 池袋親子死亡事故の概要

2019年4月19日に発生した、 池袋親子死亡事故の詳細がこちらです。
飯塚元院長は4月19日午後0時25分ごろ、豊島区東池袋の都道で乗用車を運転中、ブレーキと間違えてアクセルを踏み、赤信号を無視して横断歩道に突っ込むなどして、自転車に乗っていた松永さん親子を死亡させ、歩行者ら9人にけがをさせた疑いが持たれている。
同課によると、乗用車は現場手前で縁石に接触した後、スピードを上げながら約150メートルにわたり暴走した。二つの横断歩道で自転車の男性と松永さん親子をはね、左から曲がってきたごみ収集車に衝突した弾みで三つ目の横断歩道に突っ込み、歩行者らをはねた。その後、信号待ちをしていたトラックにぶつかって停車した。
元院長自身も重傷を負って入院したため、警視庁は任意で捜査を続けていた。元院長は事故直後、「アクセルが戻らなくなった」などと説明。事情聴取に対しても「ブレーキを踏んだが利かなかった」などと車の不具合を主張したが、同課が調べたところ、車に異常は見つからなかった。
引用元:時事ドットコムニュース
https://www.jiji.com/jc/article?k=2019110801363&g=soc
概要としては、「 2019年4月19日午後0時25分ごろ、 豊島区東池袋の都道で乗用車を運転していた飯塚幸三被告が、ブレーキと間違えてアクセルを踏み、赤信号を無視して横断歩道に進入し、自転車に乗っていた松永さん親子と衝突し、 松永真菜さんと松永莉子ちゃんを死亡させ、歩行者ら9人にけがをさせたもの」です。
松永さん親子が亡くなり、また多くの負傷者が出してしまった事故でもあり、当時は加害者である飯塚被告が逮捕されないことに世間が疑問を抱き、「上流国民」であることが要因なのでは?とされ、炎上していました。
当時はこの事故は大きく報道され、記憶に残っている方も多いのではないでしょうか。
3. 池袋親子死亡事故の事故状況

今回の事故の状況ですが、 加害車両が現場手前でガードパイプに接触し、その後、赤信号を無視して横断歩道に進入し、自転車の男性をはね、スピードを緩めずに直進し、次の横断歩道で松永さん親子が乗った自転車をはね、左から曲がってきたごみ収集車に衝突し、加害者量は回転しながら、三つ目の横断歩道で通行人4人を次々となぎ倒し、信号待ちをしていたトラックにぶつかって停車しました。
(なかなかこのような長文になる事故状況はかなり珍しいです)

衝突したゴミ収集車は横転し、加害車両も左フロントに大きな損傷があり、加害車両が明らかに高速で衝突したことがわかる事故様態です。
4. 池袋親子死亡事故の過失割合考察

事故の民事上の過失割合についての考察です。
今回の事故での過失割合は、飯塚被告100: その他被害者0で話が進んでいることが予想できます。
理由は、言わずもがなですが…(ニュースの情報を読み解く限り)判例タイムズ1と判例タイムズ98図を適用できるからです。
この判例は交差点に車が赤信号で進入し、車と人と接触をしている判例になります。
ですので、飯塚被告が対人保険と対物保険を使用し、それぞれの被害者に損害額の100%を補償していくことになります。
5. 池袋親子死亡事故、なぜ加害者が「逮捕」されなかったの?

では、当初飯塚被告がなぜ「逮捕」されなかったかを、事故処理を長年してきた僕の目線から話しますと、
- 加害者自身もケガをしていたため治療を優先した
- 逃亡や証拠隠滅の恐れがなく逮捕の要件を満たさなかった
- 取り調べ捜査が可能になるまで逮捕はしなかった
この3点があげられます。
①に関してですが、そもそも加害者もかなりの負傷をしていました。

これが飯塚被告が乗っていたプリウスなのですが、かなりのスピードを出してゴミ収集車と衝突していますので、一目全損で車体の骨格が完全に歪んでしまっていますね。
またエアーバッグも開いており、損傷が激しいことが写真を見ればすぐにわかります。
飯塚被告本人もろっ骨の骨折をしていたとのことで、治療をする必要があると警察が踏んだことが大きいです。
また飯塚被告に限らず、交通事故の場合、そもそも逮捕されないことが大いにあります。
下記の引用を少し見ていただきたいのですが、
交通死亡事故の加害者が逮捕されないことは良くあることだと言えます。
犯罪が起きたとき、被疑者を逮捕するには、①逮捕の理由と②逮捕の必要性が要件となります。
①逮捕の理由は、「被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある」ということです(刑事訴訟法第199条第1項)。
この案件で、この要件が充たされることは問題ないものと思われれます。問題は②です。
②逮捕の必要性は、「明らかに逮捕の必要性がないと認めるときは、この限りではない」という形で規定されており(刑事訴訟法第199条第3項但書)、刑事訴訟規則第143条の3では、「逮捕状の請求を受けた裁判官は、逮捕の理由があると認める場合においても、被害者の年齢及び境遇並びに犯罪の軽重及び態様その他諸般の事情に照らし、被疑者が逃亡する虞がなく、かつ罪証を隠滅する虞がない等明らかに逮捕の必要がないと認めるときは、逮捕状の請求を却下しなければならない」と規定しています。
つまり、逮捕の必要性とは、①逃亡の恐れと、②罪証隠滅の恐れ、があるかどうかによることになり、これらがあるか否かについては、「被疑者の年齢及び境遇並びに犯罪の軽重及び態様その他諸般の事情に照らし総合判断されることになります。
交通死亡事故の場合でも、前科がなく、犯罪を認めて真摯に反省しており、任意保険に加入しており被害弁償も見込まれ、被疑者の年齢が高く、安定した職場ないし家庭環境にあり、酒酔い運転、無免許運転などの悪質性は伴わない交通死亡事故などの場合、上記①と②が明らかになく、逮捕の要件を充たさないものとして逮捕されない場合も良くあることなのです。
引用先:弁護士ドットコム
逮捕をするためには、「逮捕の理由」と「逮捕の必要性」が認められなくてはなりません。
「逮捕の理由」とは、その人が罪を犯したと疑うだけの理由があることで、「逮捕の必要性」とは、逃げたり犯罪の証拠を隠滅させる恐れがあることです。
飯塚被告の場合、明らかに本人が事故を起こしていますので「逮捕の理由」はあるのですが、当初は入院していたので逃げたり証拠を隠滅するのはむずかしいとして「逮捕の必要性」が認められなかったといえるんですね。
これって、よくあることなんです、交通事故では。
また逮捕した場合、引き続き勾留(被疑者の身柄を拘束)するための請求をするかどうかを判断するため、逮捕から48時間以内に送検、勾留が認められた場合、原則10日または20日以内に起訴か不起訴を決定するための捜査をしなければいけないという時間制限が発生します。
簡単に言いますと、加害者を捕まえ続けておくにはタイムリミットが決まっていて、いったん逮捕すると48時間以内に犯人を検察のところに連れていかなければいけない上に、検察が犯人を起訴するか不起訴にするかを決定するため、10日以内(延長されたら20日以内)に必要な捜査をしなければならなくなるということです。
この期限を過ぎたら、起訴は出来なくなってしまいます。
今回のケースだと、飯塚被告が怪我を負っており、高齢であることあることから、 10日以内(延長されたら20日以内) に「聞き取り調査」や「実況見分」を行えないと警察や検察が判断をくだした可能性があります。
加害者が「逮捕されるかされないか」より、「法の下できちんと裁かれること」が重要であると判断したのでしょう。
一番大事なのは、飯塚被告の「刑事裁判の判決の内容」なんですね。
6. 池袋親子死亡事故、在宅起訴について

では、なぜ今回の飯塚被告は「在宅起訴」であったかと言うと、答えは簡単でして、 逮捕がなされないまま捜査が行われて起訴されたからです。
被疑者が逃亡する可能性も証拠を隠滅する可能性もないため,逮捕されなかった場合は,身柄を拘束されることがないまま刑事手続が進むことになります。
この場合,被疑者は,日常生活を送りながら捜査を受けることになり,場合によって起訴(略式起訴または通常の起訴)されることになります。
そして,起訴された場合には,裁判(略式手続または通常の裁判手続)が行われることになります。
なお,身柄拘束がなされていない場合には,起訴までの期間が定められていないため,起訴または不起訴となるまで長期になることがあります。
また,被疑者が逃亡する可能性や証拠を隠滅する可能性が生じた場合には,その段階で逮捕されてしまうこともあります。
引用元:弁護士法人中村国際刑事法律事務所
上記の事務所の記載を引用させていただきましたが、「逮捕」をされなかった場合、このように「在宅起訴」はよくあります。
そしてここからはようやく一般の刑事裁判へ入っていきます。
7.最後に

今回の件で、世間では多くの声が寄せられていました。
確かに飯塚被告が「逮捕」されなかったり、「在宅起訴」であったりの状況を見ると、飯塚被告が元官僚のエリートであることから「上級国民だから特別扱いしている」と不公平な気持ちになってしまうのも納得はできます。
ですが、大切なのは、今後の刑事裁判でどのような判決を下されるかなんです。
ここの判決に世間の皆さんが納得するかしないかが一番大事な気がします。
僕も、この事故の流れって遅いなぁと思います。
ですが、ここからは裁判でしっかり話が進んでいきますので、皆さんでこの判決の結果を見守りましょう。