1. 元特捜部長が無罪主張をしている死亡事故について、徹底解説します!
1-1. この記事の目的

この記事では「元特捜部長が無罪主張をしている死亡事故」について、詳しく解説をします。
この記事の目的は3つあります。
- 元特捜部長が無罪主張をしている事故の概要がわかる。
- 元特捜部長が無罪主張をしている事故のポイントがわかる。
- 車が故障した事故の立証の難しさがわかる 。
それでは早速みていきましょう。
出島Z
損害保険業界に10年居座り続けてしまった出島Zです。元々は生命保険の営業を行っており、その後某外資系自動車保険会社に入社し、交通事故の査定業務、示談交渉を行なっていました。物損担当者・人身損害担当者を経験し、年間600件以上の交通事故を解決に導いてきました。正確に数えてはいないですが、トータル5,000件以上は確実に示談を行ってきました。損保を2社渡り歩きました。FP資格、損害保険募集人(自動車保険、火災保険、傷害疾病保険)、生命保険募集人、共済募集人、高校教員免許保持者。趣味は音楽鑑賞、作成、DJ、ブログ、インテリア、グラフィックデザインです。
2.元特捜部長の無罪主張死亡事故の概要

2018年2月18日(日)、午前7時すぎに東京・白金にある北里通り商店街にて起きた事故の詳細です。
元東京地検特捜部長で弁護士の石川達紘被告(80)はおととし2月、都内で乗用車のアクセルペダルを誤って踏み込み、320メートルにわたって暴走させ、歩道にいた男性をはねて死亡させたとして過失運転致死などの罪に問われています。
東京地方裁判所で開かれた17日の初公判で、石川弁護士は「絶対にアクセルペダルは踏んでいません」と述べて、無罪を主張しました。
このあと検察は冒頭陳述で「被告は停車中の車から降りようとした際、誤って左足でアクセルペダルを踏み込み、車は時速100キロメートルを超える速度で暴走した」などと指摘しました。
一方、弁護側は「被告は停車中、足がアクセルペダルに届かない位置まで運転席のシートを後ろに移動させていた。アクセルを踏み込むことは不可能でエンジンを制御するプログラムの不具合の可能性が十分考えられる」と主張しました。
石川弁護士は東京地検特捜部長や名古屋高検検事長などを歴任し、政財界の汚職事件を数多く手がけたことで知られています。
この裁判の審理はことし7月まで続く予定です。
引用元:NHK NEWS WEB
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200217/k10012289111000.html
事故概要としては、「 2018年2月18日(日)、午前7時すぎに東京・白金にある北里通り商店街に乗用車にて走行していた石川被告が320メートルにわたってスピードを上げて走行させ、歩道にいた男性をはねて死亡させた 」ものです。
石川被告は事故直前に現場近くの路上に車を止め、知人がトランクに荷物を積み込むのを運転席で待っていたが、車が何かしらの故障で急発進し、片側1車線の道路を約200メートル直進した後、反対車線を横切って歩道に突っ込み、被害者に衝突したとの主張をしています。
3. 元特捜部長が無罪主張をしている死亡事故の争点(ポイント)

今回の事故による争点は、「石川被告の過失による事故か、車の故障によるメーカー側の責任によるものか」です。
石川被告側の主張によれば、
「停車中、足がアクセルペダルに届かない位置まで運転席のシートを後ろに移動させていた。アクセルを踏み込むことは不可能でエンジンを制御するプログラムの不具合の可能性が十分考えられる」
と弁護士を通じて話を展開していますので、まずはこれを客観的根拠を持って立証する必要が出てきます。
ここでは「エンジンを制御するプログラムの不具合がでていたか?」について石川被告側で立証する必要があります。
もし車に不具合がでている場合は、その車は「リコール」の対象として回収しなければならない為、メーカー側も大きな損失ができる可能性があります。
では、どうやってこの車に不具合があったかを調べるかをみていきましょう。
4. 車の不具合の確認と調査の流れ

まずはメーカー側のホームページに「リコール」対象となっている車の情報が開示されていますので、まずはそちらを確認します。
ここで調べた結果、車が「リコール」対象となっており、「リコール」の対象となっている起因となる故障が今回の事故と因果関係が認められれば、メーカー側へと責任が移行します。
ですが、ここで車が「リコール」対象となっていない場合は、メーカー側へ車に不具合があったことを報告し、メーカー側が石川被告の不具合供述を基に「調査・検討」を行います。
さらに、ここからは国土交通省も交えてメーカーへの調査を行います。
メーカー側の 「調査・検討」 の結果、設計または製造に関する不具合が見つかった場合は、国土交通省と連携し、「リコール」を即実施する運びになります。
ただし、ここでの調査で不具合が出なかった場合は、石川被告による車の不具合の立証が不十分ということで、石川被告側の運転操作に問題があったことになります。
5. 実際は不具合はあったの?無かったの?

正直な話、車の故障を立証することはなかなか難しいです。
理由はいくつかあります。
- 事故をして大破してしまっている為調査が難航
- 多くの類似する事象が発生していないものを「リコール」対象にしづらい
①に関しては、今回の車の破損状況を見れば、骨格が歪んでしまっているような損害です。

この状態から車に不具合があった箇所を探し出すことは、技術者ならなおさらお分かりいただけると思いますが、車を調査するプロでさえかなり難しいです。
故障していたとおもわれる箇所ですら破損している可能性が高いですので、そもそも調査ができないんですね。
②に関しては、同じような故障がいくつも発生していない事象には、故障をメーカー側も認定しないという問題があります。
普通に考えていただけたらわかると思いますが、何千台何万台と生産している内、1台から不具合が発生しても、ユーザー側の使用の問題や、経年劣化や摩耗である可能性をまずは疑います。
1台の不具合では「リコール」を行うことは、赤字覚悟で行わないといけなくなりますので、ちょっとやちょっとの事ではメーカーは非を認めませんし「リコール」は行いません。
「リコール」を行うのはいくつかの同じような事象が起こってからです。
6. 元特捜部長が無罪主張をしている死亡事故(総括

ちなみに僕の考えでは、「車の故障に関しては立証不十分」で過失運転致死が認められ判決が下ると予想しています。
僕はこの手の「車の故障の疑い」で多くの事故をジャッジしてきましたので、「車の故障の立証」がいかに難しいかを一応知っているつもりです。
まずは判決を待ちましょう。