過失割合は何の為に決めるの?
前回の【目から鱗、過失割合の考え方】で、交通事故における過失割合は誰がどの様に決めるのかをお伝えしました。
今回は、
何の為に過失割合を決めなければいけないのか、
を話します。
過失割合は、賠償金額を算出するため
まずは、過失割合に関する出島Zの考えなのですが、
- 過失割合が大きいからといってその人が社会的に悪い
- 過失割合割合が少ないからといってその人が社会的に悪くない、
という事には繋がらないと思っています。
あくまでも過失割合は、損害賠償の金額を決める手段に過ぎません。
出島Zが現役で自動車事故の査定業務をしていた際に感じていたのは、
「過失割合の本来の意味合いを理解しないままに過失割合に拘るあまり、本来の意味の損害賠償額を算出する事ではなく、感情論で過失割合を追求する人があまりに多い」
という事です。
自分は悪くない、相手の方が悪い、というような白と黒の2パターンで過失割合を捉えてしまう人が、多すぎるという事です。
判例タイムズの限界
前回【目から鱗、過失割合の考え方】にて案内しました判例タイムズ38を基に、保険会社や弁護士は過失割合を探っていくのですが、 この判断タイムズ自体、本当にこの過失割合で正しいのか?と思うようなものもいくつか存在します。
過去の裁判事例や、過去の先代達の方々が知恵を絞って作り上げてきた判例ですので、あまり文句は言いたくないのですが、社会一般人が考える常識と、若干の乖離があるようなものもあります。
納得のいかない判例の存在
例えば、無免許+飲酒運転をしていたAさんが、時速100kmのバイクにて青信号の交差点を進入した際に、対向車線から青信号の交差点を徐行しながら右折してきたBさん車両と衝突事故を起こしてしまいました。
この場合、どちらの過失割合が高くなると思いますか?
Aさんは、無免許だし飲酒運転もしているし、時速100kmで運転していますので、そりゃもちろん、Aさんが100%過失割合があるに決まってると思う人もいると思いますし、100%じゃないにしろ、ほぼAさんの過失割合が高いでしょ、と思う人もいると思います。
結論から言いますと、判例タイムズ上で言えば、
Aさん:Bさん = 45:55
になってしまいます。
判例タイムズは、事故形態によって基となる基本割合があり、その基本割合から修正項目があれば、修正をするという仕組みになっています。
元々のこの事例は、A:Bの基本過失割合は15:85からスタートしており、Aさんの無免許+飲酒運転でAさんに+10%の修正が加わり、スピード超過で+20%の修正が加わる事になります。それらを加算すると、45:55になるのですが、どうも腑に落ちない。
そもそも運転してはいけないAさんが道路を運転している時点でアウトでしょって思うし、飲酒運転をしてても+10%しか修正されない意味がわからないし、100㎞も出して20%だけの修正かよ、ふざけるな!と思う人いるでしょう。
私もそう思います。
過失割合が大きい=社会的に「悪」という訳ではない
こんな具合で、判例タイムズ自体にも限界があると出島Zは考えています。
ですので、判例上であなたの過失割合が大きいと言われても、それが=(イコール)社会的に見てあなたが悪いと思わないでいただきたいんですね。
全部が全部、腑に落ちる判例ばかりではないと言う事です。
そして過失割合とは、感情的になって良し悪しを決める物でもなく、
損害賠償の金額を粛々と決めていく一つの手段という事に過ぎないという事。
今、交通事故の対応にて過失割合で困っている人がいれば、これを是非理解していただきたいですし、これから事故に遭ってしまった場合も、過失割合はそういうものなんだと認識してもらいたいです。