はじめに
交通事故の外傷にてよくある傷病が、
「むち打ち」
「打撲傷」
「挫傷」
と言われるものです。
殆どの自動車事故の、8割はこの症状で通院する人がいるんじゃないかというくらい、多い症状です。
むち打ち、打撲傷、挫傷と言われると、どんなイメージがありますか?
重い症状なのでしょうか?
軽い症状なのでしょうか?
今日はこのむち打ち、打撲傷、挫傷と言われるものについて話しをしていきます。
「むち打ち」ってそもそも何?
「むち打ち」とは、交通事故等の衝撃により、頸部(首)がむち打ったように過度に伸縮した結果、頸部の筋肉、靭帯、椎間板等の軟部組織や骨組織が損傷することを総称した用語になります。
むち打ち症は、病名ではありませんので、医師の診断書に「むち打ち損傷」と記載されることはなく、「頸椎捻挫・頸部捻挫・頸部損傷・頸部挫傷・外傷性頸部症候群」等と記載されるのが通常です。
症状としては、交通事故後に頭・首・肩・腕・背中等の痛み、めまい・しびれ・知覚異常・倦怠感、吐き気・微熱・睡眠障害・情緒不安定等に陥る、等が出るのが特徴です。
「打撲傷」とは?
「打撲傷」とは、転倒や転落、殴打などによって体の一部に強い衝撃が加わることで皮下組織や筋肉にダメージが加わった鈍的外傷のことです。
皮膚に傷口はないものの、皮下組織や筋肉などが挫滅ざめつし、微小な血管が破壊されることでアザが生じ、腫れや痛みを伴います。
「挫傷」とは?
「挫傷」とは、転倒や打撲の際、皮膚は傷つかないが皮下組織や深部が傷つくことです。
いわゆるうちみと言われるものです。
「むち打ち」の治療期間
難しく説明しましたが、要は骨折はしてないものの、痛みが残るものが「むち打ち」や「打撲傷」、「挫傷」と言われるものなのですね。
そして治療期間にはもちろん個人差がありますが、ここにむち打ちの治療期間と累計治癒率(完治した人の割合)の研究データの一部を記載しますね。
治療期間 | 累計治癒率 |
1日のみ | 40.7% |
1週間以内 | 60.4% |
1ヶ月以内 | 79.1% |
3ヶ月以内 | 89.6% |
6ヶ月以内 | 93.9% |
一年以内 | 97.4% |
https://www.jkri.or.jp/PDF/2017/sogo_75kagawa.pdf
【引用】交通事故によるいわゆる“むちうち損傷”の治療期間
「むち打ち」は3ヶ月間の治療で約9割の人が完治しているのがわかります。
保険会社の対応
保険会社は、勿論これらのデータを保有しており、「むち打ち」や「打撲傷」、「挫傷」の患者には事故から3ヶ月で打ち切りの話をしてきます。
そして、最長でも6ヶ月までしか認定できませんと主張してきます。
また保険会社は、過去の判例も用いてきます。
最高裁判所の判決(最高裁判所第1小法廷昭和63年4月21日判決 最高裁判所民事判例集42巻4号243頁)
において、
「損傷が頸部軟部組織(筋肉,靱帯,自律神経など)にとどまっている場合には,入院安静を要するとしても長期間にわたる必要はなく,その後は多少の自覚症状があつても日常生活に復帰させたうえ適切な治療を施せば,ほとんど1か月以内,長くとも2,3か月以内に通常の生活に戻ることができるが一般である」
との見解が示されています。
要は、最長でも3ヶ月で「むち打ち」や「打撲傷」、「挫傷」は治りますという判例です。
症状固定とは?
これらの話しを持ちかけても治療を継続する被害者に、保険会社は後遺障害の話しを持ち出してきます。
これ以上治療しても治らないところまで治療をしてきたので(症状固定)、症状固定の日を決め、後遺障害の申請をしましょう。
という具合に話しを進めてきます。
ちなみに症状固定を決めた日以降の治療費は、一切保険会社は対応しない事になります。
この症状固定という言葉と、後遺障害という言葉はまた別の記事にて書きたいと思います。
まとめ
お分かりになりましたでしょうか。
「むち打ち」、「打撲傷」、「挫傷」は、治療期間が3ヶ月で治る人が8割。
保険会社は事故から3ヶ月経てば、「むち打ち」、「打撲傷」、「挫傷」の患者に打ち切りの話しをしてくる。
これ以上治療しても治らない状態を症状固定と呼び、保険会社は症状固定の日を決め、後遺障害の申請を打診してくる。
この症状固定と後遺障害については、いずれ改めて記事にしたいと思います。