1.はとバスの追突事故を徹底解説します!
1-1. この記事の目的
この記事では「はとバス追突死亡事故 」について詳しく解説をします。
この記事の目的は2つあります。
- 「はとバス追突事故」の概要がわかる。
- 保険の事故処理の流れを理解できる。
- 刑事上、行政上の対応がわかる。
それでは早速みていきましょう。
出島Z
サイトの管理人は、長年に渡って損害保険会社に勤め、自動車保険の査定・示談交渉を行っておりました。何千件もの交通事故を事故解決へと導いてきました。その経験・実務に則して記事を記載しております。
1-2. はとバス追突事故の概要
今回の事故の概要を説明します。
NHKニュースWEBからの抜粋です。
4日午後6時半ごろ、新宿区西新宿で観光バスの「はとバス」が、停車していたハイヤーに追突して乗り上げ、そのまま30メートルほど進んだあと、街路灯に衝突して止まりました。
バスとハイヤーに乗客はいませんでしたが、この事故で、ハイヤーの運転手、宮崎昭夫さん(52)が死亡しました。
バスを運転していた37歳のドライバーはその場で逮捕されましたが、いったん釈放され、病院に入院して検査を受けました。
警視庁によりますと、検査の結果、ドライバーはインフルエンザにかかっていて事故当時は38度を超える高熱があったとみられることがわかりました。
バスのドライブレコーダーには、事故が起きる数秒前からドライバーの頭が前後にゆっくりと揺れている様子が写っていたということです。
「はとバス」によりますと、事故を起こした37歳のドライバーは、4日午前6時半すぎに出勤し、同7時前に出庫前の点呼を受けたということです。
この点呼では、アルコールの呼気の検査や、本人からの健康状態の申告のほか、チェック役の担当者が対面でドライバーの様子を確認することになっていますが、本人から体調不良に関する申告はなく、対面の確認でも異常は見られませんでした。
ドライバーは、午前7時すぎから修学旅行の貸し切りバスの運行業務にあたったあと、都内を巡回する定期観光バスの業務に移り、新宿の待機場所から食事中の乗客を迎えに行く最中に事故を起こしたということです。
このドライバーは、平成27年に入社し、観光バスの運転業務にあたってきたということですが、これまでに目立ったトラブルはなかったということです。
はとバスによると、事故を起こした運転手は会社の聞き取り調査の中で、自身の体調について「事故の前日、少しかぜ気味だったため、漢方のかぜ薬を服用して午後8時に寝た。事故の当日は午前5時に起床し念のため再度、漢方のかぜ薬を服用して出勤した。その後も若干、かぜ気味だと感じていたが、それ以上の症状だとは思わず、警察病院での検査で初めてインフルエンザに感染している事が分かった」と話しているということです。
そして、事故については、「事故を起こす前後の記憶がなく、気が付いた時には街路灯に激突していた」と話しているということです。
引用元:
NHK NEWS WEB
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191205/k10012203301000.html
では、これを基に考察していきますね。
1-3. はとバス追突事故の保険上の対応
保険上(民事上)の過失割合に関しては2パターン考えられます。
- ハイヤーが信号待ちで停車していたパターン
- ハイヤーが路肩に駐車していたパターン
ニュースの内容では、停車なのか路外駐車なのかを読み取れなかったのですが、2パターンに分けて解説します。
ハイヤーが信号待ちをしていたパターン
この場合は、はとバス100:ハイヤー0です。
後方からの追突の場合、前方のハイヤーは事故を予見できませんので、過去の判例上も100:0になります。
ハイヤーが路肩に駐車していたパターン
この場合は、はとバス80:ハイヤー20 or はとバス70:ハイヤー30 です。
え、 加害者70 :被害者30ってあり得ないでしょ?
という声が聞こえてきそうなのですが…
もちろん根拠があります。
まず今回のケースですと、判例タイムズ157図の「駐車車両に対する追突事故」の判例が適用されます。
基本の過失割合は加害者100 :被害者0 からのスタートなのですが、今回の事故の現場を見る限り、まずは事故付近では停車禁止の標識がある可能性があります。
クロ丸をしたところが現場付近でして、直ぐ近くに駐車禁止の標識があります。
この場合は、 ハイヤー側に 駐車禁止場所の過失修正が+10加わります。
また日経新聞では、 「ハイヤーは交差点の停止線すぐ手前で停車していた」の記載があり、もしこれが路外駐車であれば、さらにハイヤー側に 駐停車方法不適切の過失割合が+10~20加わります。
ただし、今回のケースですと運転者側は体調が悪いことを自覚していながら運転していたこともあるので、はとバス運転者側にも「著しい過失」+10を加点できる可能性があり、 はとバス90:ハイヤー10 or はとバス80:ハイヤー20 で収まることも考えられます。
いずれにせよ、バス側のドライブレコーダーが残っているとのことなので、まずは保険会社側でもバスのドライブレコーダーを入手し、その内容を確認し事故現場を特定してから過失割合を判断することになりそうですね。
保険の実務上の話であれば、はとバス側が対物・対人保険を使用しハイヤーの所有者と遺族の方に過失割合分の賠償を行います。
ハイヤーはくしゃくしゃになっていましたので、全損判断となって時価賠償の話になりますし、被害者は死亡されているので、死亡慰謝料と逸失利益を法定相続人の方々に賠償するようになります。
1-4. はとバス追突事故の刑事上における処分
今回は自動車運転処罰法違反(過失運転致死)の疑いで逮捕されていましたね。
今回は過失運転致死傷の罪で起訴されるでしょうね。
懲役や禁固(1か月〜7年)、または罰金(1万円〜100万円)が科される可能性が高いです。
1-5. はとバス追突事故の行政上における処分
今回は、ハイヤーの運転者がお亡くなりになってしまっているので、行政上の処分も重いです。
交通事故では、基礎点数と付加点数が加算されます。
基礎点数は、事故の原因となった違反の点数が引かれ、付加点数とは事故の程度や不注意の割合で+加点される項目です。
今回の場合ですと、基礎点数2点(安全運転義務違反)+付加点数20点(重大な過失を問われた場合)or13点となる可能性が高いです。
22点か15点で、前歴がなければ1年間の免許取り消しですね。
2. はとバス追突事故では、はとバス運転手orはとバス会社側、どっちが悪い?
ネットやツイッターでは、どちらが悪いのかを意見しているものが多いですが、僕の意見では、運転手70:はとバス30の責任割合ですね。
どっちも悪いけど、そこには70:30の責任割合が発生していると考えます。
運転手の供述によれば、事故当日に体調が悪いことを会社に申告していません。
仮に、ここで運転手が会社へ申告していれば、 運転手0:はとバス100ですが、今回は運転手は申告をしていませんので、運転手側に自己管理責任と安全管理認識の欠如が問われると思います。
もちろん、慢性的に人出不足が起こっているような職場環境であり、会社側に休むことすら申告できないような状況を生み出していたのであれば、会社側にさらに責任割合が加点されるとは思いますが。
僕は仕事柄、損保で過失割合をジャッジする仕事についていましたので、どうしてもすべて100:0や0:100のような、どっちが完全に悪いというような意見に違和感を覚えてしまいます。
交通事故でもそうなのですが、100:0の事故なんて珍しいくらいでして、起こる事件や事故には何かしらの責任割合が当事者にはあるはずなんです。
片方が100%悪いってことはほとんどないと思っています。
なので、今回は運転手の管理能力に70の責任があり、会社側の社内環境に30の責任があると思料します。
以上、元損保査定マンの出島Zでした。