1. 大津の園児巻き込み事故について、改めて徹底解説します。
1-1. この記事の目的
この記事では「 大津の園児巻き込み事故 」について、改めて詳しく解説をします。
この記事の目的は3つあります。
- 大津の園児巻き込み事故の概要がわかる。
- 大津の園児巻き込み事故の本質がわかる 。
- 同じような事故を二度と起こさないための注意点がわかる。
それでは早速みていきましょう。
出島Z
損害保険業界に10年居座り続けてしまった出島Zです。元々は生命保険の営業を行っており、その後某外資系自動車保険会社に入社し、交通事故の査定業務、示談交渉を行なっていました。物損担当者・人身損害担当者を経験し、年間600件以上の交通事故を解決に導いてきました。正確に数えてはいないですが、トータル5,000件以上は確実に示談を行ってきました。損保を2社渡り歩きました。FP資格、損害保険募集人(自動車保険、火災保険、傷害疾病保険)、生命保険募集人、共済募集人、高校教員免許保持者。趣味は音楽鑑賞、作成、DJ、ブログ、インテリア、グラフィックデザインです。
2 大津の園児巻き込み事故の概要
2019年5月8日に発生した、大津の園児巻き込み事故の詳細がこちらです。
女性は8日午前10時15分ごろ、大津市大萱6丁目の県道交差点を軽乗用車で直進中、対向車線を右折しようとした乗用車と衝突。はずみで歩道で信号待ちをしていた保育園児らの列に軽乗用車を突っ込ませ、園児2人を死亡させ、園児ら14人に重軽傷を負わせた疑いがある。署は、対向車線の右折車への注意義務を怠り、安全な速度に減速しないまま漫然と直進した過失があると説明した。
女性は8日、自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致傷)の疑いで逮捕されたが、同日夜に釈放されていた。県警の調べに対し、「相手の車が止まってくれると思った」「誠に申し訳ない思いです」などと話しているという。
引用元:朝日新聞DIGITAL
https://www.asahi.com/articles/ASM5S3J5KM5SPTJB00B.html
概要としては、「 2019年5月8日午前10時15分ごろ、大津市大萱6丁目の交差点にて、右折をしようとしていた乗用車と交差点を直進してきた軽自動車が衝突し、軽自動車が歩道で信号待ちをしていた園児と保育士列に突っ込み、園児2人が死亡し、園児1人が意識不明の重体、その他園児や保育士も怪我を負わしたもの」です。
本当に胸が苦しくなる事故でしたね。
園児が2名も亡くなり、また多くの園児や保育士が負傷してしまった事故でもあり、当時は大きく報道され、記憶に残っている方も多いのではないでしょうか。
今回はこの交通事故についての事故原因の解説をしたいと思います。
3. 大津の園児巻き込み事故の事故状況
事故状況ですが、 白の軽自動車=無職 下山真子さん(62)と グレーの乗用車 =新立文子被告(52)が、信号機のあるT字路交差点の中で衝突したものです。
引用元:秋田魁新報社
https://www.sakigake.jp/news/photo/20190602AK0020/1/
グレーの乗用車が右折レーンにて右折をしようとしていたところ、対向車線から直進をしていた白の軽自動車が、お互いの右バンパー・ヘッドライトに衝突し、白の軽自動車がそのまま歩道を乗り上げて、園児や保育士に向かって押し倒していった状況になります。
4. 大津の園児巻き込み事故の過失割合考察
事故の過失割合についての考察です。
今回の事故での過失割合は、白の軽自動車20: グレーの乗用車 80で話が進んでいることが予想できます。
理由は、(ニュースの情報を読み解く限り)特段の過失修正ポイントがなく、判例タイムズ107図を適用していると考えられ、かつ白の軽自動車=無職 下山真子さん(62) が不起訴であったからです。
白の軽自動車=無職 下山真子さん(62) が不起訴であったという事実は、裏を返せば、検察では、「白の軽自動車は青信号で交差点に入り、速度超過もしておらず、 グレーの乗用車 =新立文子被告(52) に大きな過失割合が生じていた」と判断を下したことが読み取れます。
5. 大津の園児巻き込み事故の過失割合ポイント
今回の衝突事故にはポイントが2つあります。
- 直進車と対向右折車の事故形態であること
- 信号機の色が双方青であったこと
です。
原則、直進車と対向右折車の事故形態は、右折車が進路妨害にて80%の過失割合が問われ、直進車が前方不注意の注意義務違反で20%の過失割合が問われます。
なぜ右折車が大きく過失割合が問われるかと言いますと、
右折車は、交差点で直進車、左折車の進行を妨げてはならない。
(道路交通法 37 条)
と道路交通法でも決められているからなんです。
法律で「直進車が優先である」とそもそも決められているんですね。
ハンドルを切る側が、直進車を妨げてはいけないというのが、ルールなんです。
但し、信号機のある交差点では、信号機の色によって過失割合が大きく変わってきます。
今回は、軽自動車側にドライブレコーダーがついており、事故状況が動画として証拠として残っている為、直ぐに事故解析が進んでいたとみられますが、 ドライブレコーダーの映像が無ければ、本来は信号機の争いがここで入ってきます。
今回はお互いが青信号であることが濃厚ですので、ここについては深く言及はしませんが、念のため信号機の争いになった際のいくつかのパターンを記載しておきます。
6. 過失割合の補足、信号機の色のパターン
今回のような信号機のある交差点での事故で、信号機の色が争点になった際の考え方としては5パターンあります。
(※お互い赤信号にて交差点に進入しているパターンは除きます。)
少しここら辺は複雑になりますので、飛ばして読んでいただいても大丈夫です。
- お互い青色信号で交差点に進入しているパターン
- お互い黄色信号で交差点に進入しているパターン
- グレーの乗用車が青信号で交差点に進入し黄色信号で右折し、白の軽自動車が黄色信号にて交差点に進入しているパターン
- グレーの乗用車が青信号で交差点に進入し赤信号で右折し、白の軽自動車が赤色信号にて交差点に進入しているパターン
- グレーの乗用車が黄色信号で交差点に進入し赤信号で右折し、白の軽自動車が赤色信号にて交差点に進入しているパターン
です。
仮に今回のケースに当てはめて、それぞれを判例に当てはめて過失割合を検討してみますと、
① お互い青色信号で交差点に進入しているパターン
グレーの乗用車:白の軽自動車=80:20
(判例タイムズ107図)
②お互い黄色信号で交差点に進入しているパターン
グレーの乗用車:白の軽自動車=60:40
(判例タイムズ109図)
③グレーの乗用車が青信号で交差点に進入し黄色信号で右折し、白の軽自動車が黄色信号にて交差点に進入しているパターン
グレーの乗用車:白の軽自動車=30:70
(判例タイムズ108図)
④グレーの乗用車が青信号で交差点に進入し赤信号で右折し、白の軽自動車が赤色信号にて交差点に進入しているパターン
グレーの乗用車:白の軽自動車=10:90
(判例タイムズ111図)
⑤グレーの乗用車が黄色信号で交差点に進入し赤信号で右折し、白の軽自動車が赤色信号にて交差点に進入しているパターン
グレーの乗用車:白の軽自動車=30:70
(判例タイムズ112図)
引用元:
https://jiko-higaisya.info/percentage-of-fault/go-straight-and-turn-right/
になります。
いずれも、上記の割合は、基本の過失割合であり、特段の修正項目がない場合の割合になります。
仮に携帯電話を見ながら等の「著しい過失」があれば、ここから過失割合を修正する事になりますし、その他の修正項目があれば修正を施します。
7. 大津の園児巻き込み事故は、どのようにしたら防げたか?
では、どのようにしたら今回の事故は防げたのでしょうか?
結論を言えば、グレーの乗用車 =新立文子被告 (52)が、交差点の手前で直進車を先に通し右折をしておけば、起こらなかった事故です。
右折車は、対向からくる「すべての車」を先に通してから、右折を開始しなければなりません。
直進車である白の軽自動車=無職 下山真子さん(62)に関しては、判例上は20%の過失割合がとられているものの、実際の現場では右折車が右折することを予見することは非常に難しいことに加え、それを予見して回避処置を行うことはほぼ不可能に近いところがあります。
理由は、 「空走距離」や「制動距離」の計算上、直ぐには車は止まれませんし、反射神経は個人差によるものが大きいからです。
「空走距離」と「制動距離」はネットでググってください。
ですので、もしあなたが十字路交差点やT字路交差点で右折を行う際は、かならず対向車が通り過ぎるのを待ってから、右折を開始してください。
これは、絶対です。
8. 加害者の取材について
ANNの=新立文子被告(52)の取材について、僕の感想をお伝えします。
新立文子被告(52)は確かに反省していない様に思えます。
「反省していない」と言うより、まだ今回の交通事故の本質を理解できていないです。
本人の発言で、「(直進車の運転手が)せめて減速、あるいはブレーキがあったらっていうことは、それを責め立てるわけではないですけれども、どうだったんだろうとか」とありましたが、同等の責任が下山真子さん(62)にもあると今も考えています。
確かに新立文子被告(52)は園児や保育士に衝突していないから、「自分だけがなんでこんなに責められないといけないのか」と考えての事だと思います。
厳しい言い方ですが、その考え方は非常に甘いです。
更に言えば、今回の事故は起こるべくして起こっています。
なぜかと言いますと、新立文子被告(52)が「道路交通法」や「賠償」、「民法」、「自賠法」の知識を一切持たずに車を運転しているからです。
9. 大津の園児巻き込み事故は、あくまでも氷山の一角です
実は、今回の件に限らず、世の中には新立文子被告(52)の様に「道路交通法」や「賠償」、「民法」、「自賠法」の知識を一切持たずに車を運転している人がたくさんいますし、あくまでもこの事件は氷山の一角に過ぎません。
僕が実際に保険会社として現場で担当者として事故処理をしていた際に、 新立文子被告(52) のような人にたくさん出会いました。
むしろ僕は、日本の教育や免許制度で 「道路交通法」や「賠償」、「民法」、「自賠法」 に触れる機会を設けない限り、このような悲惨な事故は無くならないと考えていますし、今の社会が変わらないのであれば、同じような悲惨な事故が必ず起こると考えています。
もちろん僕自身も微力ながらこの様な事故が起こらないような啓蒙活動をこのブログを通し行っていくつもりではありますが、まずは皆さんが 「道路交通法」や「賠償」、「民法」、「自賠法」に関心を持っていただけたら幸いです。
亡くなられた園児には、心からご冥福をお祈りします。
怪我を負われた園児や保育士に、心からお見舞い申し上げます。
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