物の価値までを上限(おさらい)
前回【9割の人が知らない、「モノの価値を上限」の考え方】にて、対物保険や個人賠償責任保険は
物の価値を上限に
賠償をする事をお話しました。
この「物の価値を上限に」という縛りには、根拠があり、最高裁判所の昭和49年4月15日判決において
「交通事故により損傷を受けた中古車の事故当時における取引価格は、原則として、これと同一の車種・年式・型、同程度の使用状態・走行距離等の自動車を中古車市場において取得するに要する価額によつて定めるべきである」
とした考え方が裁判所から言い渡され、これを基に保険会社や弁護士は実務を行なっています。
一般的に対物保険や個人賠償責任保険、その他賠償保険は、約款と言われる保険会社の規定があり、各社共通で、
加害者が負う「法律上の損害賠償責任額」を賠償する
と明記されています。
この法律上の損害賠償責任というものが、
民法709条にて定められており、
その範囲が、
先程述べた最高裁判所の昭和49年4月15日判決を準拠し、物の価値(車の場合は中古車市場の金額)を上限に賠償するという考え方を生み出しているのです。
最高裁の判決は、法律ではありませんが、類似する事件について最も影響力のある特別な判例になります。
ほぼ法律に近い効力があるので、最高裁での判決で物(車)の賠償について、物の価値(車の場合は中古車市場の金額)までを賠償する事で事足りると言い渡されている以上、保険会社や弁護士もこの判例に従わざる得ないのです。
対物保険特約
しかしながら、この「物の価値を上限に」を覆す保険の特約が存在します。
それが、
対物超過特約
と言われる保険です。
これを付帯していれば、物の価値以上に修理費がかかってしまっても、修理費分までを補償する事ができます。
仮に、相手のプリウスを事故で破損させ、プリウスの価値が100万円、修理費が150万円かかってしまっても、対物超過特約に入っていれば、保険会社は150万を被害者に支払える訳です。
判例上の縛りをぶち壊してくれる保険なんですね。
対物超過特約のメリット
ただしこれを付けていても、あまり付帯した本人が特をすると言う実感があるわけではありません。
対物超過特約に入っていなくても、保険会社は被害者に対し、「物の価値(車の場合、中古車市場の金額)を上限に」なんとか示談(解決)しようとしますし、対物超過特約が無くても保険会社の職員は交渉する術を知っています。
誰が得をするかといえば、被害者や保険会社の担当者ですね。
被害者は修理費全額出してもらえますし、保険会社の担当者は、被害者との交渉がスムーズにいきます。
加入している本人には殆どメリットを感じられない特約ですが、相手と揉めたくないと思う方は、是非掛け金に余裕があれば加入される事をお勧めします。
ある意味、思いやりのある保険の特約になります。