相手にケガを負わしてしまった際に賠償する対人保険
対人保険は、相手のケガを補償する保険で、自賠責の不足分を補う任意保険の主要な補償になります。
どのような項目が補償されるかを、詳しくみていきましょう。
対人保険の補償項目
対人保険の補償項目を挙げます。
1.治療費
2.通院交通費
3.休業損害
4.入院諸雑費
5.付添看護料
6.慰謝料
7.後遺障害慰謝料
8.後遺障害逸失利益
これらを主に補償します。
詳しく見ていきましょう。
1.治療費
交通事故で負ってしまった怪我を治療する際に、医療機関で発生する治療費のことです。
対人保険では、自由診療10割分の治療費を保険会社が補償します。
健康保険を使用することもでき、その際は第三者行為の傷病届けを健康保険組合に提出する必要があります。※ここはまた改めて別の記事で改めて記載します。
2.通院交通費
自宅から医療機関へ通院する際の交通費を実費分を補償します。
公共の交通手段であれば実費分、車での移動であればガソリン代として1kmあたり15円にて補償します。
タクシー代については、怪我の症状に応じて実費を対応してくれる場合があります。
仮に勤務先から医療機関へ通院していた場合は、勤務先から医療機関までの交通費を補償します。
3.休業損害
事故により給与や収入が減ってしまった場合に、減額した部分を補償します。
主に
- 給与所得者
- 家事従事者
- パートアルバイト
- 自営業
- その他職業
で休業損害の計算方法が分かれています。
給与所得者は、週に30時間以上の労働をしている会社員のことを指しており、休業損害日額は、事故から3ヶ月前の給与/90日で算定され、休業日数は実際に事故で会社を休んだ日にちが認定されます。
家事従事者は、いわゆる専業主婦のことを指します。日額5,700円×医療機関へ通院した日数が補償されます。
パート・アルバイトは、週の労働時間が30時間未満の労働者を指しています。休業損害日額は、事故3ヶ月前の給与/事故3ヶ月前の稼働日数で算定され、休業日数は事故3ヶ月前の稼働率で算定されます。
自営業は、法人化していない会社を経営されている人のことを指します。基本的には、事故前年度の確定申告書上の内容で休業損害日額を算定します。休業損害日額は収入-経費/365日で算定され、休業日数は、医療機関に通院した日数が補償されます。
その他の職業については、それぞれの特殊な職業に応じて対応することとなりますので、ここでは割愛します。
4.入院諸雑費
入院をした際にかかる雑費を補償します。
入院した際にかかる病衣や洗面用具などですね。これは1日あたり1,100円補償されます。
5.付添看護料
事故をした当事者を看護した人がいた場合、付添人の看護料を補償します。
付添看護料は入院と通院している患者の費用に分かれます。
6.傷害慰謝料
- 入院の場合、医師の指示または受傷の程度、被害者の年齢等により必要があれば職業付添人(有資格看護人・家政婦)の部分には実費全額、近親者付添人は1日につき4,100円が被害者本人の損害として認められます。
- 通院の場合、症状または幼児等必要と認められる際には、1日につき2,050円が被害者本人の損害として認められます。
交通事故による精神的苦痛を慰謝料として金銭賠償します。
慰謝料は3つの基準が存在します。
- 自賠責の基準
- 任意保険の基準
- 弁護士の基準
自賠責の基準は、実通院日数×2と総治療期間を比べ、いずれか少ない日数×4,200円を補償します。
例えば1/1に事故を起こしてしまい、病院に10日通い、2/28で治療を終了した人の場合、実治療日数10日、総治療期間は59日間となり、実治療日数10日×2<総治療期59日で、
4,200円×20日=84,000円
となります。
任意保険会社の基準は各社で設定されている計算式にて算定されます。
弁護士基準は、治療期間で慰謝料を算定していくのですが、この弁護士基準の慰謝料は別の機会にお話しします。ひとまず自賠責の基準や任意保険会社の基準よりは高めに金額が設定されていることだけお伝えします。
7.後遺障害慰謝料
後遺障害の等級が認定された場合に、まとまった後遺障害慰謝料を賠償します。
- 自賠責の基準
- 任意保険の基準
- 弁護士の基準
後遺障害は1-14級まであるのですが、 これも傷害慰謝料と同様に3つの基準が存在します。
等級 | 弁護士基準の慰謝料(※) | 任意保険基準の慰謝料 | 自賠責保険の慰謝料 |
---|---|---|---|
1級 | 2,800万円 | 1,050万円~1,850万円 | 1,100万円 |
2級 | 2,370万円 | 918万円~1,500万円 | 958万円 |
3級 | 1,990万円 | 797万円~1,250万円 | 829万円 |
4級 | 1,670万円 | 687万円~1,100万円 | 712万円 |
5級 | 1,400万円 | 580万円~900万円 | 599万円 |
6級 | 1,180万円 | 484万円~750万円 | 498万円 |
7級 | 1,000万円 | 399万円~600万円 | 409万円 |
8級 | 830万円 | 317万円~470万円 | 324万円 |
9級 | 690万円 | 241万円~350万円 | 245万円 |
10級 | 550万円 | 184万円~260万円 | 187万円 |
11級 | 420万円 | 134万円~190万円 | 135万円 |
12級 | 290万円 | 92万円~130万円 | 93万円 |
13級 | 180万円 | 57万円~80万円 | 57万円 |
14級 | 110万円 | 32万円~45万円 | 32万円 |
※赤い本 「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」参照
ざっと表に書きましたが、このような数字になってきます。
尚、弁護士基準は赤い本といわれる東京地裁の基準に基づき記載したものですので、例えば大阪地裁基準など地方の地裁基準もあり、 ここの金額は地方によって変わってきます。
また任意保険の基準も、各保険会社の基準が設けられているため、だいたいの目安にて記載しています。
8.後遺障害逸失利益
後遺障害の等級が認定された場合に、事故をしていなければ得られたであろう労働収益(利益)を賠償します。
計算方法は、【逸失利益とは?】を参照してください。
自動付帯の対人保険
基本的に対人保険は、自動車保険に加入する際に自動付帯されています。
それは自動車保険の中でも、最も大切な保険であると認識されているからです。
理由は、相手方に後遺障害の等級が認定される怪我を負わせてしまったり、死亡させてしまうような事故は賠償金額が高額になるためです。
何千万や何億の金額を賠償しないといけなくなるケースがありますので、加害者にとっても被害者にとってもなくてなならない保険だからです。
ですので、対人保険はできる限り無制限の設定金額を選びましょう。
自賠責保険とは
対人保険のお話をしてきましたが、自賠責保険についても言及したいと思います。
自賠責とは強制保険です。
相手の怪我を賠償する保険になります。
自賠責保険はナンバープレートが交付されている自動車は必ず加入しないといけない義務となっています。
加入せずに公道を運転した場合は、1年以下の懲役または50万円以下の罰金に科せられます。
自賠責には金額の上限が設定されており、傷害120万円、死亡3,000万円、後遺障害4,000万円を補償します。
傷害とは、上記で説明してきました項目の、1.治療費~6.傷害慰謝料の事を指し、後遺障害とは、7.後遺障害慰謝料と8.後遺障害逸失利益を指します。
ですので、対人保険とは「自賠責保険」と「任意保険の対人保険」のことを指します。
仮に任意保険を1億円で設定した場合のイメージで書きますと、こんな感じです。(後遺障害は介護1級の場合)
黄色が自賠責保険、青が任意保険になります。
自賠責保険にてカバーできない金額を、任意保険が補うイメージですね。
対人保険は、まずは自賠責保険にて傷害の120万円を相手に賠償していき、120万円を超えてきた場合は、任意保険の対人保険に自動的に切り替わっていくという仕組みになっています。
自賠責は過失割合をかけず、任意保険は過失割合をかける。
交通事故は過失割合の発生する事故が多いです。
対人保険でも相手には過失割合分を賠償します。
上記で述べた項目の1~8まではすべて過失割合がかかってきます。
ですが、自賠責保険は過失割合をかけません。
どういうこと?と思いますが、自賠責保険は被害者保護を目的に作られた保険ですので、過失割合を掛けずに賠償するという仕組みになっています。
ですので傷害の120万円部分は必ず100%の過失割合で賠償されます。
問題は120万円超えてしまった場合ですが、120万円を超えてしまった傷害部分は過失割合がかかってきます。
仮に傷害の部分で200万円の総損害が発生し、被害者の過失割合が80%の場合は、
200万円×80%=160万円が賠償されます。
また、傷害の部分で80万円の総損害が発生し、被害者の過失割合が、80%の場合は、
80万円が賠償されます。
後遺障害の部分も同じような仕組みで過失割合を計算します。
まとめ
・対人保険は相手の怪我を賠償する保険
・対人保険は自動付帯
・傷害部分とは、治療費、通院交通費、休業損害、入院諸雑費、付添看護料、傷害慰謝料の事を指す
・後遺障害部分とは、後遺障害慰謝料、後遺障害逸失利益を指す
・対人保険には自賠責保険から先に保険金が支払われ、120万円を越えれば自動的に任意保険に切り替わり支払われる
・対人保険には自賠責の基準、任意保険の基準、弁護士の基準の3つがある
保険料に余裕があれば、是非とも対人保険は無制限でのご契約を検討ください。