1. 自動車保険と生命保険は重複しても支払われる?徹底解説します!
1-1. この記事の目的
この記事では自動車保険と生命保険が重複しても支払われるか否かについて詳しく解説をします。
この記事の目的は3つあります。
- 自動車保険と生命保険が重複しても支払われるか否かがわかる。
- 自動車保険と生命保険の性質の違いがわかる。
- 自動車保険と生命保険が重複しても支払われる根拠がわかる。
それでは早速みていきましょう。
損害保険業界に10年居座り続けてしまった出島Zです。元々は生命保険の営業を行っており、その後某外資系自動車保険会社に入社し、交通事故の査定業務、示談交渉を行なっていました。物損担当者・人身損害担当者を経験し、年間600件以上の交通事故を解決に導いてきました。正確に数えてはいないですが、トータル5,000件以上は確実に示談を行ってきました。損保を2社渡り歩きました。FP資格、損害保険募集人(自動車保険、火災保険、傷害疾病保険)、生命保険募集人、共済募集人、高校教員免許保持者。趣味は音楽鑑賞、作成、DJ、ブログ、インテリア、グラフィックデザインです。
2. 自動車保険と生命保険は重複しても支払われる
自動車保険と生命保険は重複しても保険金は支払われるか否かについて解説していきます。
まず結論から言いますと、 自動車保険と生命保険は重複しても保険金は支払われます。
理由は、自動車保険と生命保険の性質に違いがあるからです。
では、その仕組みの違いについてみていきましょう。
3. なぜ自動車保険と生命保険が重複しても支払われるの?
自動車保険と生命保険は重複しても保険金は支払われる理由の一つに、自動車保険と生命保険の性質の違いが挙げられます。
では、どのような違いがあるかをみていきましょう。
ひとくちに「保険」と言っても、その種類はいろいろあります。
(略)偶然の事故によって生じた損害額に応じて保険金が支払われるのが「損害保険」、人の「生死」に関して定額の保険金が支払われるものが「生命保険」です。損害保険は損害保険会社のみで、生命保険は生命保険会社のみで取り扱いができます。
また、損害保険なのか生命保険なのかどちらともいえない人のケガ(傷害)や病気に関して保険が支払われる傷害保険や医療保険など、損害保険会社でも生命保険会社でも取り扱うことが可能なものを「第三分野の保険」といいます。
生命保険
(第一分野)損害保険
(第二分野)傷害保険・医療保険など
(第三分野)保険取扱い 生命保険会社 損害保険会社 生命保険会社および損害保険会社 保険事故 人の生存・死亡 偶然な事故 傷害・疾病など 保険金支払い 定額払い 実損払い 定額払いおよび実損払い(注) (注) 定額払いが基本となっていますが、保険金額を限度に実損払いとする商品もあります。
引用元:日本損害保険協会
日本損害保険協会のHPから引用させてもらいました。
「保険」というものは、「生命保険(第一分野)」と「損害保険(第二分野)」←自動車保険はココに該当します、そして「第三分野の保険」に分けることができます。
表をみていただくとお分かり通り、 「生命保険(第一分野)」と「損害保険(第二分野)」 には違いがいくつかありますね。
では、それぞれの特徴を解説します。
4. 自動車保険と生命保険が重複しても支払われる理由、生命保険は保障だから
「生命保険(第一分野)」 には、大きく3つの種類があります。
それは、
- 定期保険
- 終身保険
- 養老保険
です。
生命保険は、死亡した際に(生存もある)、あらかじめ契約をしていた金額が受取人に支払われるという性質なんです。
①の定期保険に関しては、期間を一定期間決めて、その間に無くなったら保険金が支払われる保険です。
②の終身保険に関しては、一生涯の補償が続き、亡くなったら保険金が支払われます。
③の養老保険は、 満期がくるか、被保険者が亡くなったら保険金が支払われる保険です。 定期保険に似ていますが、定期保険の一定期間が完了し、生存していても保険金が受け取れる保険になります。
この3つの保険に共通して言えるのは、 補償期間内であれば決められた定額が支払われることです。
一般的に生命保険では「保障」という漢字を使うのですが、 「今ある状態が損なわれることがないように守ること」という意味合いになります。
生命保険は、損なわれた状態にある本人やその家族を保護するために支払われるため、「保障」という漢字が利用されます。
5. (自動車保険と生命保険が重複しても支払われる理由、自動車保険は補償だから
自動車保険 は「損害保険(第二分野)」という分野の中にある一つの保険の種類になります。
「損害保険」とは、一定の偶然な事故によって生じた損害額に応じて保険金を支払う保険のことです。
自動車保険では、大きく4つを補償します。
- 自分(たち)の怪我 ⇒ 人身傷害保険
- 自分の車 ⇒ 車両保険
- 相手の怪我 ⇒ 対人保険
- 相手の物 ⇒ 対物保険
①の人身傷害保険に関しては、事故に遭った際に自分の怪我の治療費や交通費、休業損害や精神的損害金を補償します。
②の車両保険に関しては、事故に遭った際に自分の車の修理額を補償します。
③の対人保険に関しては、 事故に遭った際に相手方の怪我の治療費や交通費、休業損害や慰謝料を賠償します。
④の対物保険に関しては、事故に遭った際に相手の車の修理額(時価額)を補償します。
この4つの保険に共通して言えるのは、 偶然な事故によって生じた実損害額に応じて保険金が支払われることです。
一般的に自動車保険(損害保険)では「補償」という漢字を使うのですが、 「 すでに起こった損害を補い、つぐなうこと」 という意味合いになります。
自動車保険(損害保険)は、 すでに発生した損害に対して(所定の保険金額の範囲内で)実費払いされるため、「補償」という漢字が利用されます。
6. 自動車保険と生命保険が重複しても支払われる理由、最高裁判例がそのようになっている
この自動車保険と生命保険の違いにより、自動車保険と生命保険は重複していても、支払われることになります。
おさらいしますと、
自動車保険は、一定の偶然な事故によって生じた実損害額に応じて保険金が支払われる性質であり、
生命保険は、死亡した際に(生存もある)、あらかじめ契約をしていた金額が受取人に支払われるという性質なんです。
自動車保険は損害が出たところを補充、補うという性質であり、
生命保険は条件に満たされた事象(死亡なり生存)が起きれば、金額が払われる性質がある、
のですね。
同じ保険でも性質が全然違うために、これらは重複しても支払われます。
ちゃんとした根拠を言うのであれば、
「保険契約に基づいて給付される保険金は,すでに払い込んだ保険料の対価たる性質を有し,もともと不法行為の原因と関係なく支払われるべきものであるから,たまたま本件事故のように不法行為により被保険者 が死亡したためにその相続人たる被上告人両名に保険金の給付がされたとしても,これを不法行為による損害賠償額から控除すべきいわれはない」
(最判昭和39年9月25日民集18巻7号1528頁)
最高裁の出した判決でも、自動車保険(賠償)と生命保険は損益控除されるべきではないと言われています。
多くの学説の見解でも,最高裁と同様に,損益相殺を否定しています。その理由づけとしては,①生命保険では,事故発生以前にすでに被保険者の債権は発生していて,単にその支払期限が不確定なだけ(いつ人が死ぬかはわからない)だから,保険金の取得は事故発生に基づく利益ではない,②生命保険金は,保険契約に基づき発生したもので,事故によって直接発生したものではない,③生命保険金は,払い込んだ保険料の対価であり,事故によって発生したものではない,④生命保険は交通事故による損害の回復が本来の目的ではない,といった種々のものが挙げられています。
引用元:弁護士による交通事故相談サイト
http://www.fushimisogo.jp/accident/wisdom/?ID=1368
学説においても、最高裁の判例と同様に、生命保険は事故での損害の利益には含まれず、生命保険は契約により履行される保険金であり、交通事故によって発生したものではないし、本来の事故の為だけに受け取るものでもないからということが理由に挙げられます。
このような理由から、自動車保険と生命保険は重複しても支払いがされるという訳ですね。