1.自動車保険で車の所有者が死亡した場合に必要な相続手続きを解説します！
1-1. この記事の目的
この記事では、長年自動車保険会社で査定業務を行ってきた僕が、自動車保険で車の所有者が死亡した場合に必要な相続手続きを解説していきます。
ちなみに、ここでいう自動車保険は任意保険であることを前提に話を進めていきます。
この記事の目的は3つあります。
- 自動車保険で車の所有者が死亡した場合に必要な相続手続きを理解できる。
- 車の相続手続きがわかる。
- 自動車保険の相続手続きがわかる。
それでは早速みていきましょう。
出島Z
損害保険業界に10年居座り続けてしまった出島Zです。元々は生命保険の営業を行っており、その後某外資系自動車保険会社に入社し、交通事故の査定業務、示談交渉を行なっていました。物損担当者・人身損害担当者を経験し、年間600件以上の交通事故を解決に導いてきました。正確に数えてはいないですが、トータル5,000件以上は確実に示談を行ってきました。損保を2社渡り歩きました。FP資格、損害保険募集人（自動車保険、火災保険、傷害疾病保険）、生命保険募集人、共済募集人、高校教員免許保持者。趣味は音楽鑑賞、作成、DJ、ブログ、インテリア、グラフィックデザインです。
2. 車の相続と自動車保険の相続
車の所有者が亡くなってしまった場合、その車の相続の手続きを行う必要があります。
相続人が車に乗り続ける、売却する、廃車する、といった場合でも車の所有者の相続手続きを行う必要があります。
また、相続人が車に乗り続けるといった選択肢を選ぶ場合、自動車保険の名義を相続していく必要も出てきます。
その際に必要な手続きについて説明します。
3. 車も相続の一つ
車も相続財産の一つです。
車は相続財産であり、遺産分割協議の対象となります。
遺産分割協議とは、相続人で相続財産をどのように分け合うかを話し合うことを言います。
遺産分割協議はどのように行うか
遺産を相談して分けることになった場合、「遺産分割協議」を行う必要があります。この協議に特別な方法があるわけではありません。ただ、次の点は気をつけなければなりません。
●相続人全員が参加して協議を行うこと ●協議の結果を書類に残すこと 分割協議は、必ず相続人全員で行わなければなりません。相続人に未成年者がいる場合は、その代理人の参加も必要です。相続人が１人でも欠けた状態で行うと、その結果は無効となります。
また、あとで問題が起こらないよう、協議の結果は書類に残すとよいでしょう。この書類のことを「遺産分割協議書」といいます。
引用先：三井住友銀行
https://www.smbc.co.jp/kojin/souzoku/chishiki/chishiki05.html
車の所有者が亡くなった場合には、誰が相続するのかを決め、名義変更の手続きが必要となります。
名義変更を行わないと売却や廃車にすることはできませんし、乗り続ける場合も自動車税の納付や自動車保険の加入などの面で名義変更が必要となります。
4. 車の名義を確認しよう
車検証を手元に用意し、所有者が誰になっているのか確認しましょう。
車検証の「所有者の氏名又は名称」の欄に書かれている人が車の所有者です。
ここが亡くなっている方の名前で有れば、相続手続きが必要になってきます。
ローンを組んでいる方の場合、この所有者がディーラーやローン会社の名義になっていることがあります。
理由は、ローンの返済が完了していないからです。
この場合はディーラーやローン会社、リース会社に連絡し使用者が亡くなってしまった旨を連絡しましょう。
5. 車の名義変更を行おう
車の所有者を確認できたら、その車を相続する人へ名義変更を行いましょう。
車の名義を相続人名義に変更しておかなければ、相続人自身の財産として認められず、車を売却したり、車の使用を一時的に中止したりする場合に必要な「一時抹消登録」や、車をリサイクル事業者に引渡し適正に解体処分する場合の「永久抹消登録」（相続手続きと並行して永久抹消登録を行う場合には、車の名義人を相続人名義にしておかなくても手続きは可能）などの手続きができなくなるなどの不都合が起きます。
車の名義変更の手続きは運輸支局（軽自動車の場合は軽自動車検査協会）で行いますが、普通自動車か軽自動車かによって必要な書類が異なります。
普通自動車の場合
普通自動車で特定の相続人の名義に変更する場合、以下の書類が必要となります。
遺産分割協議により代表相続人（新所有者となる相続人）が手続きを行う場合
- 自動車検査証（車検証）
- 戸籍謄本または戸籍の全部事項証明書
- ※死亡の事実および相続人全員が確認できるもの。氏名等の変更があった場合はそれが確認できるものも必要。
- 車庫証明書（証明後40日以内のもの）
- 遺産分割協議書
- ※相続人全員が実印を押したもの。未成年者を含む場合は代わって「特別代理人」の押印が必要。
- ※相続する車の価格が100万円以下であることを確認できるものを添付した場合は遺産分割協議成立申立書でも可。
- 代表相続人（新所有者となる相続人）の印鑑証明書（発効後3カ月以内のもの）
- 代表相続人（新所有者となる相続人）の実印（本人が来られる場合）又は委任状（本人が来られない場合、実印を押印したもの）
相続人全員（新所有者となる相続人を含む）が手続きを行う場合
- 自動車検査証（車検証）
- 戸籍謄本または戸籍の全部事項証明書
※死亡の事実および相続人全員が確認できるもの。氏名等の変更があった場合はそれが確認できるものも必要。 - 車庫証明書（証明後40日以内のもの）
- 相続人全員（新所有者となる相続人を含む）の印鑑証明書（発行後3ケ月以内のもの）
- 相続人全員（新所有者となる相続人を含む）の実印（本人が来られる場合）又は委任状（本人が来られない場合、実印を押印したもの）
- 新所有者以外の相続人全員の譲渡証明書（実印を押印したもの）
軽自動車の場合
軽自動車で特定の相続人の名義に変更する場合、以下の書類が必要となります。
- 自動車検査証（車検証）
- 新使用者の印鑑（認印または署名）
- 新所有者の印鑑（認印）
- 新使用者の住所を証する書面（以下のいずれか1点、発行されてから3カ月以内、コピー可）
- 住民票の写し（マイナンバーが記載されていないもの）
- 印鑑（登録）証明書
- 車検証に記載されている所有者の方の戸籍謄本等（死亡の事実、新使用者及び新所有者が親族であることが確認できる公的機関が発行した書面）
- 自動車検査証記入申請書（軽第1号様式）
※軽自動車検査協会公式サイトのダウンロードページか同協会事務所・支所の窓口で入手できます。 - 軽自動車税申告書/自動車取得税申告書
軽自動車検査協会事務所・支所・分室近隣の関係団体の窓口で入手できます。
また、正確な必要書類については軽自動車検査協会の手続きナビで確認することができます。
6. 自動車保険の名義を相続しよう
自動車保険を亡くなられた方が契約している場合、名義変更の手続き変更を行う必要があります。
自動車保険では3つの役を契約時に設定します。
- 契約者
- 記名被保険者
- 所有者
所有者の相続に関しては説明しましたので、ここでは「契約者」と「記名被保険者」の相続を解説します。
7. 契約者と記名被保険者を確認しよう
「契約者」と「記名被保険者」を確認しましょう。
自動車保険では、
- 「契約者」＝保険料を支払う人
- 「記名被保険者」＝主に運転をする人、運転者の範囲の起点となる人
という役割になっています。
亡くなられた方が、この2役に一つでも該当しているかを確認しましょう。
確認するものは、
- 保険証券
です。
保険証券上で、「契約者」と「記名被保険者」を確認しましょう。
8. 自動車保険で契約者の相続
「契約者」が亡くなられてしまった場合、「契約者」の変更を行います。
「契約者」が亡くなってしまった場合は次の新しい「契約者」を設定し直さなければなりません。
理由は、そもそも3役の設定が必ずしも自動車保険には必要であることと、「契約者」は告知義務と契約解約権の役割も保持しているため、契約内容を変更する際や解約する際は「契約者」の承認が必要だからです。
契約者は、保険料の支払義務のほかに、告知義務を負います。また、契約解約権（契約を解除（解約）する権利）や、保険料返還請求権（契約が解除された場合に返還保険料を受領する権利）を有します。
引用先：日本損害保険保険協会
https://soudanguide.sonpo.or.jp/basic/4_1_q1.html
保険会社によって、「契約者」の変更にはルールがあるので一概には言えませんが、原則は同居の親族、もしくは配偶者になります。
ただし保険会社によっては別居の親族も契約者変更で認めていることもあるので、各保険会社に確認する必要があります。
9. 自動車保険で記名被保険者の相続
「記名被保険者」が亡くなられてしまった場合、「記名被保険者」の変更を行います。
「記名被保険者」になれる人に関しては、
- 記名被保険者の配偶者（別居でも可能）
- 記名被保険者の同居親族
です。
「記名被保険者」を変更する際には、上記の条件をクリアした人でなければ相続することができません。
自動車保険の「記名被保険者」の変更・引継ぎができるのは、原則として同居している家族間のみです。
例外として、夫婦間であればたとえ別居している場合でも、「記名被保険者」の名義変更をすることができます。
特に注意したいこととしては子供が別居している場合、「記名被保険者」を子供に変更することができません。
理由は、同居の親族しか「記名被保険者」は変更できないからですね。
なお、自動車保険の等級は「記名被保険者」に引き継がれることになります。
10. 自動車保険で車の所有者が死亡した場合に必要な相続手続き（総括）
いかがでしたか？
車の所有者が死亡した場合に必要な相続手続きに関して説明してきました。
車の所有者の相続については、
車の所有者の名前を確認し、死亡された方が所有者かを確認します。
次に代表の代理人が名義変更変更を行うか、相続人全員で名義変更変更されるかを選び、2つのパターンで必要な書類が異なるのでしたね。
また自動車保険の名義変更に関しては、
「契約者」と「記名被保険者」が死亡された方かを確認します。
それぞれ、相続をできる人に関しては、「同居の家族」と「配偶者」が原則でした。
この記事を読まれているという事は、身近な方がお亡くなりになられていることと思います。
ご冥福をお祈り申し上げますとともに、上記の手続きを無事に終えられることを心よりお祈り申し上げます。
